目次
・そもそもNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)は?
・web3.0とは?
・トークングラフとは?
・トークングラフがなぜ重要なのか
インタレストグラフやソーシャルグラフに代わる新たなマーケティングのキーワードとして”トークングラフ”というキーワードが最近注目を集めている。
これまでのデジタルマーケティングの歴史を振り返ると、まずGoogleが検索エンジンを通して人々がどのようなものに興味があるのかを可視化した”インタレストグラフ”を構築した。そして、Facebookが人と人のつながりを可視化した”ソーシャルグラフ”を構築してきた。
これらはいわゆるweb2.0までの世界におけるマーケティングのキーとなる概念であった。
では、きたるweb3.0の世界においてはどのような概念がキーとなるのであろうか?
そのキーとなりうる概念として注目を集めているのがNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)と呼ばれる技術を活用した”トークングラフ”である。
そもそもNFT(Non-Fungibel Token:非代替性トークン)とは?
NFTとは、ブロックチェーン上で発行される代替不可能な唯一無二のデータの一種であり、デジタルデータの所有権の証明などに使われる技術である。
これまで、デジタルデータは複製や流通のしやすさから唯一無二性を持たせることが難しかった。
しかし、透明性の高さやデータが改ざんされにくいというブロックチェーンの特性とスマートコントラクトと呼ばれるあらかじめプログラムされた通りに契約が履行されるという技術を用いて、そのデータがいつ誰によってどのように発行/記録されたかを残し、流通させる際にはどのようなルールに従うべきかを定義できるようになったことで、唯一無二性を持ったデジタルデータを残せるようになった。
これにより、デジタルアートや電子チケット等のデジタルデータの所有権を明確化できるようになり、様々な活用方法が提唱され注目を集めることとなった。
最近では、Twitter創業者のジャック・ドーシー氏の初ツイートの”所有権”を証明するNFTが約3億円で落札され話題を読んだ。
web3.0とは?
Google、Apple、Facebook、AmazonなどのGAFAと呼ばれるテックジャイアント企業の出現により、私たちの生活は格段に便利になった。しかし、私たちのデータがこれらの企業にどのように収集、利用されているか知る術がなく、近年はプライバシー保護の観点からこれらの不透明性が問題視されるようになった。
このような状況を生み出している理由は、一部の大企業にデータが集中し中央集権的にデータが管理されているからであり、この現状を打破する新たなwebのあり方として注目を集めているのが、非中央集権的なデータ管理を行うブロックチェーン技術を基盤とするweb3.0だ。
web3.0の解説に入る前に、webの変遷についてまずみていく。
web1.0
web1.0は1989年ごろより始まったとされており、この時代は「一方向性の時代」と呼ばれていた。
この時代に、HTMLというwebサイトを読み込むためのプログラミング言語や、URL(当時はURI)の誕生等により、ユーザーはweb上で情報を閲覧できるようになった。しかし、この時代はユーザー同士が双方向にコミュニケーションをとることが難しい状況だった。
このように、情報の発信者と取得者が一方向のコミュニケーションしかとることができなかったので、この時代は「一方向性の時代」と呼ばれた。
web2.0
web2.0の時代においては、ブログやSNS等が普及し、ユーザー同士が交流を行い双方向のコミュニケーションができるようになり、web1.0の時代と異なり誰もが情報の発信者になることができるようになった。
しかし、一部のテックジャイアント企業の登場により、情報やデータを"管理する側"と"管理される側"という構図が生まれた。
この構図により、情報やデータを”管理される側”は、自身のデータがどのように取得されどのように使われているかが不透明な状況が生まれることとなった。
web3.0
web2.0時代に生じた問題を解消するために構築されているのがweb3.0だ。
web3.0は、ブロックチェーン技術を基盤としており、データ管理は特定の中央管理者ではなく複数の利用者が互いにデータの正しさを承認しあいながら行っている。
このように、特定の中央管理者によるデータの不正利用や改ざん等が行われにくいブロックチェーン技術を基盤とすることで、web2.0時代に生じた中央管理者による不透明なデータの取得/利用という弊害が克服され、注目を集めている。
参考:web3.0とは?情報の信頼性担保の鍵:ブロックチェーンの仕組みとメリット
トークングラフとは?
前述のように、web3.0の世界においてはこれまでのデータの中央管理者が存在しなくなるので、インタレストグラフやソーシャルグラフに代わる新たな概念が必要となる。そこで提唱されているのが”トークングラフ”である。
"トークングラフ"とは、その人がどのようなトークンを保有しているか参照することで保有者の趣味嗜好を特定する仕組みのことである。
ここで使用されるトークンはビットコインやイーサリアムといった仮想通貨ではなく、NFTと呼ばれる唯一無二性のあるトークンである。NFTにはdeedIDという識別子が付与されており、このdeedIDをトラッキングすることでどのユーザー(正確にはウォレットアドレス)がそのNFTを保有しているか特定することができる。そして、どのユーザーがどのようなNFTを保有しているか分析することで、ユーザーの趣味嗜好等を分析することができる。
このように、ユーザーごとに保有しているNFTを分析して趣味嗜好等を可視化したものが”トークングラフ”と呼ばれる。
最近では、オンラインイベントに参加するための権利やメディアの購読権などをNFTを用いて発行していたりもするので、保有しているNFTを参照することで過去にどんなイベントに参加していたかやどんなメディアを閲覧しているか等を特定し、ユーザーの興味等を分析することも実際に可能になりつつある。
トークングラフがなぜ重要なのか
web3.0の時代においては、ユーザーの匿名性やプライバシーが重視されており、現実世界に存在するユーザー本人を特定することが難しい。なので、これまでのように"だれ"がどのようなものやことに興味関心があるかが不明となり、既存のマーケティング手法を使うことが困難になる。だからこそ、新たなマーケティング手法が求められており、トークングラフが注目を集めている。
ただ、この概念を理解した方の中には、トークングラフを利用してもインターネット上で個別に趣味嗜好を分析して利用するということに変わりはないのではないかと思う方もいるかもしれない。しかし、web3.0の世界では、中央管理者が存在しないので、データの独占が起こりにくく、これまでのようなデータの不正利用等は起こりにくい。
このように、ユーザーのプライバシーを保護し匿名性を担保した状態でユーザーの情報をマーケティングに活用できるという点で、トークングラフという概念は重要視されている。
現状、欧州ではGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)、米国カリフォルニア州ではCCPA(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法)といったweb上でのユーザーのプライバシーを保護する法律が施行されつつあり、社会はよりユーザーの権利を重要視する方向にシフトしつつある。
このような大きな世界的な潮流があるので、トークングラフという概念が浸透する日はそう遠くないのかもしれない。